2008.11.11 No.17号 「中国、4兆元=57兆円内需拡大策」という大いなる誤解
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2008.11.11 No.17号
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?誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考?
石平(せきへい)のチャイナウォッチ
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「中国、4兆元=57兆円内需拡大策」という大いなる誤解
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10月9日中国政府は大掛かりな景気刺激策を発表した。
それは、積極的な財政政策と適度な金融緩和によって内需を拡大し、
経済成長を促進する10項目の措置を内容とするものである。
こうした緊急の景気刺激策の発表は当然、
中国経済が失速していく危険性が高まってきていることの証拠であるが、
10月14、15日にワシントンで開かれる
緊急首脳会合(金融サミット)には胡錦濤国家主席が出席するから、
中国政府としては率先して内需拡大策を示すことによって、
会議での発言力を高める狙いもあるとみられる。
この発表を受けて、
日本のメディアを含めて世界中からの賞賛と歓迎の声が上がっている様子である。
「公共投資に4兆元、景気刺激策を発表―中国」、
「中国、57兆円規模の内需拡大策」
などのニュースタイトルがあちこちに見られて、
「4兆元=57兆円公共投資」という数字が人々に大きなインパクトを与えたようである。
しかし、ここでいう「4兆元=57兆円公共投資」という数字は、
そもそも、一つの大いなる誤解であり、あるいは、一つのごまかしに過ぎないのである。
10月9日、中国の新華通信社が公式に配信した「景気刺激策発表」の原文を読めば、
それがよく分かることである。
原文において、「4兆円」という数値が出たのは次のような文脈である。
発表はまず、前述の「10項目の措置」を羅列した後に、次のように陳述している。
「初歩的試算によると、上述の建設プロジェクトを実施するにあたって、
2010年までには約4兆元の投資が必要である。建設のスピートを早めるために、
今年第4四半期にはまず中央政府から1000億元の投資を行い、
来年にはさらに200億元を拠出して災害復興のための建設基金とし、
それをもって地方投資と社会投資を牽引する。投資の総規模は4000億元に達する」。
上述の文を読めば分かるように、中国政府は実は、
「4兆元拠出する」、「4兆元の投資を行う」というようなことを
いっさい明言していない。「諸々のプロジェクトを実施するのに当たって、
4兆元が必要だ」と言っているだけである。
明言されたのは、「1000億元の投資」を行うことと、
「200億元」の災害復興基金を拠出することだけである。
「4兆元が必要だ」とは言いながら、少なくとも今度の発表においては、
中国政府はこの投資を実際に行うようことをはっきりと言っていないし、
どこからこのような莫大な投資の財源を捻出するのもいっさい言及していない。
言ってみれば、
日本のマスメディアにおいて大きく取り上げられた「4兆元投資」は、
少なくとも今の段階では単なる言葉の独走であり、
絵に書いた餅のようなものである。
( 石 平 )
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