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2008.11.16 No.016号 杭州書記の「不動産救済発言」に見る中国経済の脆さ(2/2)

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2008.11.16 No.016号
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?誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考?

石平(せきへい)のチャイナウォッチ

http://www.seki-hei.com
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杭州書記の「不動産救済発言」に見る中国経済の脆さ(2/2)
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(1/2)からづづく


だから、何としても不動産市場を救済しなければならない、
ということである。

しかし、このような理由説明は逆に、
杭州市の今までの経済発展と地方財政は一体何によって支えてきたか
を明確に示しているのである。
杭州市にとって、不動産業は「支柱産業」であるどころか、
まさに「命の綱」となっているような様相である。

勿論それは、杭州市に限られたことではなく、
むしろ本書のレポートの数々において指摘してきた
中国の経済成長の「通病」であると言ってよい。
不動産を「支柱産業」として頼らざるをえないこの杭州という都市は、
中国全体の縮図でもあるのであろう。

たとえば、『中国房地産報』という業界紙も
2008年11月3日付の紙面で
「不動産市場への救済はすなわち中国製造業への救済だ」
という趣旨の論文を掲載して、
中国の「命綱」としての不動産業の重要性を次のように説いている。

「考えてみよう。もし不動産業の発展による吸収がなければ、
中国製造業の三大である主力軍である建築・建材・家電産業は
一体どこで市場と出口を見つかるのだろうか。
不動産業と緊密な関係にある外食産業と旅行業はどうやって生き延びるのだろうか。
建築業で働いている多くの農民工たちの生きる道は一体どこにあるのだろうか。
不動産業の繁栄がなければ、わが国の経済は一体どうなるのか、
想像するだけでゾッとするのである」

これは不動産業界の発行する業界紙の論調だから、
不動産業の重要性をことさらに強調するのは予想内のことでもあるが、
上記の杭州書記の発言に照らしてみれば、
「不動産業の繁栄がなければ中国経済の繁栄無し」
というその指摘は、やはり正鵠を射たものであると言わざるを得ない。

不動産業の急速な発展と不動産バブルの膨張を
最大の牽引力の一つとしてきた中国経済成長の脆さはまさにここにある。

しかし、前述の王国平書記の指摘した通り、
このような脆弱な経済成長の構図のままでは、
頼りの「支柱」である不動産業は一旦落ち目となれば、
そこすら生じてくる一連の連鎖反応はもはや悪夢のようなものでしかない。

要するに、不動産バブルは一旦崩壊してしまうと、
銀行が駄目になり、産業も駄目になり、失業が拡大して地方財政も傾いてしまう、
という深刻な事態は目の前の現実となってくるのである。

そして、この「中国レポート」が行ってきた一連の報告からも分かるように、
中国における不動産バブルの崩壊は避けられないすう勢である。
だとすれば、杭州市及び中国全体の経済成長の前景は
一体どのようなものとなるのかは、もはや自明のことではないのだろうか。

( 石 平 )

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◆◆  石平(せきへい)のチャイナウォッチ   2008.11.11 No.016号

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