地政学とリアリズムの視点から日本の情報・戦略を考える|アメリカ通信

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2008.10.28 No.013号 中国政府の「景気梃入れ策」とその限界( 2/2 )

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2008.10.28 No.013号
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?誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考?

石平(せきへい)のチャイナウォッチ

http://www.seki-hei.com
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  中国政府の「景気梃入れ策」とその限界( 2/2 )
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(「No.013号」1/2)より続く

しかしそれでは逆に、
今まで中国の経済成長を引っ張ってきた原動力は
一体何だろうがはっきりと見えてくるのだ。

筆者自身も兼ねてから指摘してきたように、それは要するに、
外需を頼りにした「安売輸出」の継続的伸びと、
不動産バブルの膨張を前提とする固定資産投資の無闇な拡大は、
いわば「二つの成長エンジン」として経済を急速に成長させてきた、

という構図である。

しかし今年の春頃から、
このような経済成長の構図には早く陰りが見え始めている。
国際市場からの需要減退や人民元高、
原材料・人件費の上昇など輸出に不利な条件がそろったことを背景に、
08年1?9月の輸出量の伸びは前年同期を下回った。
紡績業などの輸出企業の利益は大幅に圧縮されており、
中でも労働集約型の中小企業が経営困難に陥っている。

その一方、去年の秋から兆しが見え始めた不動産市場の低迷は
今年に入ってからも着実に進行し、
以前のレポートでも報告した「金九銀十」の夢が破れたことによって、
不動産バブルの崩壊は必至のすう勢となった。

そうすると、中国の経済成長を引っ張ってきた「二つの成長エンジン」が
同時に燃料切れとなるような事態がいよいよ目の前の現実となりつつあるのだ。
勿論それは、中国経済と社会の安定にとっては
悪夢のような前景であるとは言うまでもない。

だからこそ、中国政府はあれほど素早さで
上述の二つの「景気梃入れ策」を打ち出したわけであるが、
問題は、それは一体どれほどの効果を発揮できるのか、である。

輸出企業を救済するための「輸出税還付比率の引き上げ」という方策の場合、
実はそれが発表されたわずか二日後、
その効果に対する疑問の声が国内からもすでに上がっている。

たとえば10月23日付の「中国証券報」という経済専門誌はさっそく、

「輸出税還付率の引き上げは、
紡績業全体に57億元の利潤増加をもたらすものの、
それは紡績業の危機を解消するのにまったく不十分なので、
紡績業の衰退はもはや避けられない」

との趣旨の記事を掲載した。

不動産市場への梃入れ策にかんしても、
「市場救済の効果は限られたものである」との見方は一般的である。

しかも、不動産購入の場合の第1回返済額の下限を
従来の30%から20%に引き下げるという対策となると、
それは明らかに不動産バブルをさらに増長させ、銀行の抱えるリスクを
いっそう増大させてしまうような愚策以外の何ものでもないから、
もはや「窮余の策」というしかない。

中国政府はすでにここまでに追い込まれてきているのである。

しかし、上述の二つの景気梃入れ策のどちらも
「効果が限られる」ような中途半端なものでれば、
それが中国の経済成長の減速を食い止めるのに
あまり役に立たないのではなかろうかと思う。

アメリカ初の世界大恐慌が広がっていく中で、
世界的需要のさらなる縮減が中国の輸出産業をさらに圧迫していくだろうし、
不動産バブルはどうせ崩壊してしまうようなものである。
今年最後の四半期から、中国経済の減速はさらに顕著となっていくのであろう。

「他力本願」の外需頼りと不動産バブル頼りの経済成長の構造
そのものが変わらない限り、何の根本的な問題解決にもならないと思うが、
中国政府は次に、一体どのような方策を講じることが出来るのか、
まさにこれからのお手並み拝見である。

( 石 平 )

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◆◆  石平(せきへい)のチャイナウォッチ   2008.10.28 No.013号

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